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神戸地方裁判所姫路支部 昭和40年(ワ)188号 判決

大阪市北区中之島三丁目五番地

原告

関西電力株式会社

右代表者代表取締役

芦原義重

右訴訟代理人弁護士

田中章二

姫路市飾磨区中島字一文字 三、〇〇七番地

被告

更生会社山陽特殊製鋼株式会社管財人

原田鹿太郎

右訴訟代理人弁護士

安平康

原田昭

右当事者間の昭和四〇年(ワ)第一八八号共益債権確認等請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求は、いずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(省略)

理由

第一共益債権確認ならびに未払電力料金支払請求について

一  原告会社が電気事業を営むのを主たる目的とし、一方更生会社が特殊鋼、普通鋼および銑鉄の製造などを営むのを主たる目的とするものであること、更生会社が神戸地方裁判所姫路支部において昭和四〇年三月二三日本件開始決定をうけ、同時に被告がその管財人に選任されたこと、原告会社と更生会社間の本件需給契約は、原告会社の電気供給規程をその内容とするものであること、これによれば、毎月一定の日に原告会社のなす検針により一定期間の供給電力量に対応する電力料金が算出され、需用家において検針の日の翌日から二〇日以内に右電力料金を支払えば早収料金として一定の割引が受けられるが、検針の日の翌日から五〇日の間に右電力料金が支払われない場合は元金一〇〇円について一日金四銭(昭和四〇年六月三〇日からは金三銭)の割合による遅延損害金をあわせ支払うべく、この完済まで原告会社は電力の供給を停止し、さらに右契約じたいを解除し得る旨定められているところ、本社工場および魚橋工場需給契約については、毎月末日に、小口契約のうち一部については毎月一日に、その余については毎月二二日に各検針する約定であつたこと、原告会社が更生会社に対し本件需給契約に基づき昭和四〇年二月一日から本件開始決定の日の前日である同年三月二二日までの間、電力三、六五四万、〇、九三〇KWHを引続き供給し、これに対応する本件電力料金合計金一億八、七五一万九、三九二円に達したこと、および右電力料金未払いのまま更生会社に対し本件開始決定がなされるに至つたものであること、以上の事実は当事者間に争いがない。

二  原告は更生会社に対する本件電力料金債権は共益債権である旨を後記のとおりるる主張するのに対し、被告は、右は更生債権であると争うので、以下この点について順次判断する。

(一)  まず、原告は、電力供給契約は有償双務の継続的供給契約であるところ、右契約に基づく電力の供給ならびにこれに対する料金の支払いは将来の分も含めいずれも全一体的なものとして把握すべきものであつて、右契約の存続する限り契約当事者双方はまだともにその履行を完了していないというべきであるから、右契約については双務契約に関する会社更生法一〇三条が適用されるものというべきところ、本件の場合管財人たる被告において本件需給契約につき右同条により履行を選択した以上、原告会社の有する本件電力料金債権は同法二〇八条七号の共益債権になるものである旨主張する。

おもうに、継続的供給契約は、ほんらい当事者の一方が一定の種類の物を一定の代金で一部づつ一定の時期に一定または不定の期間引続いて相手方に供給し、相手方がこれに対して反対給付をなすことを約する契約であつて、全体として統一的な単一の性質を有するが、その内容をなす個々の給付とこれに対する代金債務とが一定期間ごとに清算される点に特殊性を有するものであつて、このことは論をまたない(したがつてまた右継続的供給契約においては、毎期の相対立する給付、反対給付間に履行上の牽連関係が認められるばかりでなく、当事者の一方は前期の給付がなかつたことを理由として同時履行の抗弁により相手方に対する後の時期の反対給付を拒み得るものであることはいうまでもない。しかし、他方、すでに問題なく履行を終つた部分はもはや同時履行の抗弁の対象外にあるものというべく、なお、右履行終了の有無は一定の時期を基準として考察すべきはもちろんであつて、このことと履行上の牽連性の問題とは別個というべきである)。しかるところ、原告会社と更生会社間に電力の供給を目的として締結された本件需給契約が有償双務の右継続的供給契約に該当することは、その性質、内容に照らして明白である。

ところで、会社更生法一〇三条一項は、「双務契約について会社及び相手方が更生手続開始当時まだともにその履行を完了しないときは、管財人は、契約を解除し、又は会社の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。」旨規定するが(同趣旨の規定として破産法五九条一項参照。なお、右規定の性質上、継続的供給契約たる右電力供給契約がここにいわゆる双務契約の範囲に属するかどうかについて若干疑問がないわけではないが、これを消極的に解すべき別段の根拠はないと考えられるので、以下積極説の立場にたつて判断をすすめる)、右履行完了の有無については、右継続的供給契約の特殊性にかんがみ前記のとおり一定の時期を基準として考察するのが相当である。したがつて、右時期までにすでに会社および相手方の双方もしくは一方がその履行を終了した場合にはもはや右規定を適用すべき余地はないものというべきである。この場合原告主張のように右継続的供給契約の前記統一的な単一の性質を強調し、該契約の存続する限り既履行の分をも含め全体として履行未完了となすことは、右継続的供給契約の右特殊性にそぐはないばかりでなく、また、右規定の解釈上合理性を欠くものと考えられ、到底賛同できない(なお、原告引用の大審院判例は本件に適切でないというべきである)。

しかして、本件電力料金債権につきその基本たる本件需給契約の履行の有無を判断するについては、右電力料金債権が本件開始決定前に生じたものであることにかんがみ、右開始決定時を基準とすべきものであるところ、右契約によれば、前記のとおり原告会社が一定の日になす検針により一定期間の供給電力量に対応する電力料金が算出され、更生会社はこれを原告会社に支払うべき約定であつたのであるから、右料金計算上の一定期間ごとに原告会社の先履行が終了する運びであつたといわなければならない。しかるところ、原告会社は前記のとおり更生会社に対し、昭和四〇年二月一日から本件開始決定の前日である同年三月二二日までの間に電力三、六五四万〇、九三〇KWHを供給し、その電力料金総額合計金一億八、七五一万九、三九二円と算出されたのであるから、右電力料金に対応する右電力量についてはすでに本件開始決定前にその履行(給付)が完了していたものといわなければならない。そうすると、前記説示に照らし、右電力料金債権の基本たる本件需給契約については同法一〇三条一項の規定は適用されないものというべきである。

したがつて、右需給契約につき右規定が適用されることを前提とする原告の前記主張はその余の判断をなすまでもなく失当であるから採用の限りではない。

(二)  次に、原告は、本件電力料金を更生会社において支払わなければ、原告会社は電気供給規程に基づいて電力の供給を停止することができ、更生会社にとつて必要欠くべからざる電力の供給の停止によつてその事業の経営ひいてその更生は不可能となるものであるから、右電力料金債権は、同法二〇八条八号の会社のために支出すべきやむを得ない費用として共益債権になるものであると主張する。

そこで、右供給停止の点は後に判断することとし、まず右同号の規定の趣旨について以下考察する。

およそ共益債権は、破産法における財団債権とほぼその性質を同じくするものであり、破産法が破産財団の存立に伴い当然発生すべき出費、その他衡平上の要求等に基づき破産手続によらないで右財団から支払われるのを適当と認める債権につきこれを財団債権として規定しているのに対し、会社更生法は更生手続のための共益的な原因に基づき主として更生手続開始後に生じた請求権を共益債権として規定し(同法二〇八条各号その他六七条七項、六九条一項、一一九条、一五五条等)、かかる請求権については更生手続によらないで他に優先して随時弁済を受け得る旨を定めている(同法二〇九条。もつとも、更生手続においては、破産手続の場合と異なり事業の経営を継続することを原則とするから、共益債権と財団債権の範囲が必ずしも一致しないのはもとより当然であり、さらに、例えば同法一一九条が、破産法の場合と異なりもともと更生債権たるべき更生手続開始前の使用人の給料請求権につき六月間分に限り共益債権として請求できる旨規定しているのは、かかる請求権について特別の保護を与える近時の社会政策的、一般的傾向に基づくものであつて、例外的な場合に属するといえよう)。ところで、会社更生法は、更生手続開始前に生じた財産上の請求権で更生手続によらなければ弁済等を受けることができないものを更生債権として規定しているが(同法一〇二条、一一二条)、共益債権はこれに比し前記のとおり財団債権類似の独自の意義、性質を有するのであるから、同法二〇八条八号の如く「会社のために支出すべきやむを得ない費用で、前各号(一号ないし七号)に掲げるもの以外のもの」を共益債権とする旨のいわゆる概括規定を解釈適用するについては、特に前記共益債権の存在理由等を充分考慮してその適用範囲を定むべきものといわなければならない。しかしながら、もし、これを不当に拡張し、ほんらい更生債権にすぎないものにつき、前記一一九条の如き明文の規定もないのにその支払いがやむを得ないものであることを口実にして安易に右同号の適用を認め、その全部もしくは一部を共益債権として処理することになれば、かかる適用を通じて共益債権と更生債権との区別があいまいとなり、同法の運用上支障をきたし、かつ、不当な結果を招来することが明白である。

以上の前提のもとに、本件電力料金債権が前記同法二〇八条八号の共益債権であるかどうかを右規定に即して考察するに、右同条は、その一号ないし七号において前記のとおり共益的性格の費用その他衡平上の見地から共益債権となるべきものを列挙しているが(例えば、一号は、更生債権者らの共同の利益のための裁判上の費用につき、また、二号は、更生手続開始後の事業経営費用等につき規定する)、同条八号はこれらに列挙された以外にも種々の予測し難い費用の生ずる余地があり、衡平上右費用を会社に負担させてもやむを得ないと認められるものについてこれを共益債権とする見地から設けられた規定というべきである。したがつて、更生会社の事業経営等になんら関係なく生じた費用、すなわち、被告の例示するような取締役選任のための株主総会招集費用、株主名簿の整理費用等がこれに該当することはいうまでもないが、右電力料金債権の如く更生手続開始前の事業経営に基づいて生じたほんらい更生債権たるべき性質の費用についてまで、その支払いが必要やむを得ないものであることに藉口してたやすく右規定を拡張することは、右規定の前記趣旨に照らしてその当否疑問であり、にわかに賛同できないのである。

もつとも、右と異なり、かかる電力料金債権がたとえ更生手続開始決定前の原因に基づいて生じたものであるとはいえ、原告会社においてその未払いを理由として電気供給規程の定めるところに従い開始後の電力の供給を停止することになれば、更生会社の事業経営に蹉跌をきたし、その更生は望み得べくもないから、右電力料金債権を前記同法二〇八条八号の共益債権として取り扱うのもやむを得ないとして原告の前記主張に同調する見解がないわけではなく、また、かかる見解のもとにしばしば実務上の処理がなされていることは当裁判所に顕著な事実である。したがつて、この点については、さらに慎重に検討すべきはもちろんであるが、仮に右見解を是認する立場をとるとしても、右見解がその前提として右のように開始後の電力の供給を停止し得るとなすことじたいに疑問がある。すなわち、更生会社が電力料金の支払いを怠つた場合、それが通常の状態であれば、原告会社はこれを理由として一定の条件のもとに爾後の電力の供給を停止し得るのであつて、このことは、電気供給規程に基づく本件需給契約に約定せられていること前記のとおりであり、なお、右約定が同時履行の抗弁権をその内容とするものであることはもとよりいうまでもない。しかしながら、本件のように更生手続開始決定がなされた場合においてはこれと異なり、右電力料金は右開始決定前の原因に基づいて生じた請求権として、前記のとおり同法一一二条の定めるところに従い更生手続によつてのみ弁済を受けることができるのであつて、更生手続外での個別的な権利行使は禁止されているのであるから、原告会社はもはや右電力料金の未払いを理由として右約定をたてに開始後の電力の供給を拒み得ないものといわなければならない(もし、原告会社においてこれを拒み得るとすれば、結局、更生会社に対し更生手続によらないでその支払いを請求できるのと結果において異らないわけであつて、右同条に照らし許されないことが明白である)。のみならず、かかる更生手続開始前に生じた債権については、その権利内容すなわち支払わるべき金額、支払期限等がすべて更生計画によつて定められるのであるから(同法二一一条、二一二条等)、右債権については、右開始による棚上げにより弁済期が到来していないのと同様に解するのを相当とすべく、したがつて原告会社において右約定に基づく同時履行の抗弁権を行使して爾後の電力の供給を拒むことはできないものといわなければならない。そうすると、いずれにせよ、原告会社において本件電力料金債権の未払いを理由として更生会社に対し本件開始決定後の電力の供給を拒み得ないわけであるから、これを拒み得ることを前提として右電力料金債権が前記同法二〇八条八号の共益債権にあたるとなす前記見解はこの点において失当というべきである。

以上の次第であつて、右電力料金債権を右同号の共益債権となすを得ないから、結局原告の前記主張も採用することができない(なお、原告は、右電力料金債権のうち少くとも更生手続申立日以降の分は共益債権であるというが、かく解すべき別段の根拠がない。もつとも、更生手続開始後の電力料金が前記同法二〇八条二号の共益債権に該当することはいうまでもないところ、原告会社が公益事業者として前記のとおり需用家の料金不払いにもかかわらず一定期間の電力の供給を義務づけられていることにかんがみ、共益債権として保護さるべき電力料金債権の範囲を更生手続開始前にさかのぼらせることが必要であるともいえようが、前記説示から明らかなようにこれはすでに解釈論の域を越え、立法上の問題に帰着するものといわなければならない)。

(三)  更に、原告は、本件電力料金債権は民法三〇六条一号の共益費用にあたるとして、これを共益債権である旨主張する。

しかしながら、右同号の共益費用は、各債権者の共同の利益のために支出された債務者の財産の保存、清算または配当に関する費用であつて(同法三〇七条)、右支出者はこれについて債務者の総財産の上に先取特権を有するのであるが、右電力料金債権がかかる共益費用に該当するとはにわかに速断できないのみならず、そもそもかかる共益費用をもつて直ちに会社更生法にいわゆる共益債権であるとなすべきなんら明文の根拠も存しない。

よつて、原告の右主張も採るを得ない。

以上のとおり、本件電力料金債権が共益債権であるとの原告の主張はすべて理由がなく、このほか現行会社更生法規上、右電力料金債権が共益債権であることを首肯するに足る別段の根拠は見当らないから、右電力料金債権は結局共益債権ではなく、前記説示に照らし更生債権であるといわなければならない。

そうすると、これが共益債権であることに基づく原告の前記共益債権確認請求および前記金員支払請求は、その前提においてすでに失当であるから、その余の判断をなすまでもなくいずれも理由がないというべきである。

第二寄託金返還債務不存在確認請求について

一  更生会社が、原告会社との間に昭和三八年一〇月九日更生会社魚橋工場に対する電気需給に伴う電気供給設備工事契約(工事費負担金契約および受託工事契約)を締結したうえ、原告会社に対しその工事施行等に伴い更生会社において負担すべき工事代金として合計金一、七九七万九、〇〇〇円を昭和三八年一二月一〇日までに三回に分割して支払つたこと、昭和四〇年五月一一日被告が原告会社に対し右工事契約を解除する旨の意思表示をなし、一方原告会社が更生会社に対し、本件電力料金債権一億八、七五一万九、三九二円の内金一、五〇〇万〇、〇四四円を自働債権とし、右工事代金一、五〇〇万〇、〇四四円を受働債権として対当額において相殺する旨の意思表示をなし、右意思表示がそれぞれ同日到達したこと、以上の各事実は当事者間に争いがない。

二  ところで、原告は、右電力料金債権は共益債権であつて、随時弁済を受け得るものであるところ、これについては会社更生法一六三条のような相殺禁止の規定がないのであるから、右相殺は有効に行なわれた旨主張する。しかしながら、右電力料金債権が更生債権であつて共益債権でないことは前記説示のとおりであるから、右主張はすでにこの点において失当である。

次に、原告は、右電力料金債権が更生債権であるとしても、一方右工事代金は更生会社が原告会社に寄託したもので本件開始決定前既にその返還債務が発生していたものであるから、右相殺は右同条一号の禁止規定になんら触れるものではなく有効であると主張するのに対し、被告は、右債務は右開始決定後に生じたものであるから、右同号により右相殺は許されない旨争うので、以下この点について判断する。

成立に争いのない甲第三ないし五号証、第一一号証および証人立花和夫、同粟野領平の各証言によれば、前記工事契約は魚橋工場需給契約により原告会社が更生会社魚橋工場に電力一、六〇〇KWを供給するための設備工事をなすにつきその工事内容その他更生会社において負担すべき前記工事代金(工事費負担金一、七二三万二、〇〇〇円および受託工事代七四万七、〇〇〇円の合計金額)等について定めたものであつて、右工事代金は右工事着工に先立ち前払いの趣旨で支払われたものであること、なお、右契約については更生会社の都合によりいつでも解除できるものとし、その場合、更生会社は原告会社の被つた損害の実費を支払い、原告会社は右代金を更生会社に返還すべく、また、工事竣工後は過不足額を精算する約定であつたこと、右契約は前記のとおり昭和四〇年五月一一日付被告の解除の意思表示により解除され、右工事の施行は中止されることとなつたが、原告会社は、右工事契約に基づき右中止までに、すでに特別高圧配電設備工事(その費用金一四一万三、三一一円)、および加古川変電所内の更生会社の二〇KV専用引出設備工事(その費用金一五六万五、六四五円)をなし、結局合計金二九七万八、九五六円の費用を要したので、前記約旨に照らし前記前払工事代金一、七九七万九、〇〇〇円から右金二九七万八、九五六円を差し引き残額金一、五〇〇万〇、〇四四円については、原告会社から更生会社にこれを返還すべきものであつたこと、以上のように認定することができる。右認定を左右するに足る証拠はない。

右認定事実によると、右工事代金は右工事契約に基づき前払いの趣旨で支払われたものであるところ、更生会社はその都合によりいつにても右契約を解除し得るが、しかし、前記工事代金については右契約を解除しない以上その返還を求め得ず、換言すれば、右工事代金の返還債務は右契約の解除によつて初めて発生すべき筋合いのものというべきであり、その返還債務が右解除前に既に発生していたものとは到底認めることができない。

そうすると、前記工事代金一、五〇〇万〇、〇四四円については、原告会社は更生会社に対し、前記解除により本件開始決定後である昭和四〇年五月一一日これが返還債務を負担するに至つたものというべきであるから、原告会社のなした前記相殺は、前記同法一六三条一号に照らし、結局許されないものというべきである。

三  以上の次第であつて、原告会社は更生会社に対し右工事代金一、五〇〇万〇、〇四四円の返還債務をなお負担しているものというべきであるから、寄託金返還債務の名目のもとにこれが不存在確認を求める原告の前記請求も理由がないといわなければならない。

第三結論

よつて、原告の本訴請求をいずれも失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 日高敏夫 裁判官 浜田武律 裁判官 亀岡幹雄)

〈以下省略〉

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